神奈川県箱根町出身で、2006年に長田庄平とチョコレートプラネットを結成した松尾駿(1982年8月18日生まれ)。彼らがコント師として実力を蓄えるなか、2017年頃から劇的なブレイクを牽引したのが、松尾による「IKKOの形態模写」でした。顔立ちの骨格や体型が不思議と酷似していたことに加え、カツラを被りメイクを施した瞬間のビジュアルの爆発力は、劇場や深夜番組で瞬く間に話題を呼びました。
しかし、当時の芸能界において、文化人や一流美容家を大げさにデフォルメするものまねは、一歩間違えれば当事者のプライドを傷つけ、関係各所からNGを出されかねない危うさを孕んでいました。松尾自身も、初めてIKKO本人と対面する収録現場では、極度の緊張とプレッシャーに晒されていたと後に明かしています。
当時の特番インタビューや関係者の証言によると、初めて自身のものまねを目の当たりにしたIKKOの第一声は、怒りどころか「ありがと〜〜〜!」という歓喜の絶叫でした。IKKOが公認を出した決定的な理由は、松尾の芸に「悪意」が微塵もなく、言葉遣いやメイクのグラデーション、指先の角度に至るまで「美に対する敬意」が宿っていたからに他なりません。パロディを「消費」される対象ではなく、自分という存在を愛情深く拡散してくれる「表現」として受け止めたIKKOの度量の広さが、公認劇の原点でした。