政治の言葉が形骸化する中、皮肉にも一般社会で核をめぐる思考を揺さぶったのはカルチャーの力だった。「原爆の父」と呼ばれた物理学者J・ロバート・オッペンハイマーの栄光と苦悩を描いた映画『オッペンハイマー』は、日本国内でも公開時に大きな波紋を広げた。核兵器の破壊力だけでなく、それを作り出した科学者の倫理的葛藤、そして国家権力がいかに技術を軍事利用へと回収していくかという冷徹な力学をスクリーンに叩きつけたからだ。
現在、Netflixなどの定額制ストリーミングサービスで関連作品が配信され、NHKオンデマンドでも当時の被爆証言や密約検証に関する政治ドキュメンタリーが再評価されている。遠い教科書の中の出来事だった核問題は、エンターテインメントやアーカイブを通じて、現代を生きる世代にとって「自らの安全保障のリアリティ」として再接続されている。