本作が昭和、平成、令和という三つの時代を跨いで失恋ソングの最高峰に君臨し続ける理由は、極限まで無駄を削ぎ落としたフレーズの対比構造にある。
特にリスナーの心を捉えて離さないのが、サビで繰り返される「レイニー ブルー」というリフレインと、それに続く独白である。「もう 終わったはずなのに」という感情の揺り戻し、そして「あなたの幻 消すように」と願う切迫した祈り。ここには、別れを頭では理解していながらも、感情が追いつかない人間の根源的な未練が鮮烈に描かれている。
大津あきらのペンは、感傷に溺れるだけの甘美な言葉を徹底して排除している。「雨は 冷たいしずく」という即物的な描写を挟み込むことで、熱を帯びた未練の炎を冷徹な現実が容赦なく冷ましていく。心理学において、未練のプロセスは「否認」「怒り」「取引」「抑うつ」「受容」の5段階を辿るとされるが、『レイニー ブルー』の歌詞はこの「抑うつから受容へと向かう境界線」をわずか数行のフレーズで見事に定着させているのだ。
徳永英明特有の、息を多く含んだファルセットと切実な地声の行き来が、この歌詞の持つ「諦念と情熱の狭間」をこれ以上ない説得力で増幅させる。聴き手は主人公の痛みを追体験しながら、自らの胸の奥底に眠る過去の古傷を重ね合わせずにはいられない。