事件の発端は1947年7月上旬、UFO墜落現場とされるニューメキシコ州コロナ近郊の牧場主マック・ブレイゼル氏が、敷地内に散乱する異様な残骸を発見したことでした。軽金属ホイルのようなシート、バルサ材のような梁、頑丈なゴムくず、謎のテープ状の破片に当惑したブレイゼル氏は、地元シェリフを通じてロズウェル陸軍飛行場(RAAF)に通報しました。
通報を受けた同飛行場の情報将校ジェシー・マーセル少佐らが現地へ急行し、残骸を回収しました。そして1947年7月8日、広報担当官ウォルター・ハウト中尉が「ロズウェル陸軍飛行場がフライング・ソーサー(空飛ぶ円盤)を捕獲・回収した」という前代未聞の公式プレスリリースを発信したことで、世界中に衝撃が走りました。
しかし、わずか数時間後、第8空軍司令官ロジャー・ラミー准将が会見を開き、「回収された物体は気象観測用気球とレーダー反射器(レーダー・ターゲット)の残骸であった」と前言を完全撤回しました。この性急すぎる発表の翻転が「軍が何か途方もない事実を隠蔽した」という猜疑心を生み、半世紀以上にわたる巨大な疑惑の火種となりました。
1994年、米空軍が議会総務会計局(GAO)の要請を受けてまとめた米軍の機密解除文書報告書『ロズウェル・レポート』において、事件の全貌が公表されました。回収された残骸の正体は、当時最高機密に指定されていた「プロジェクト・モグール(Project Mogul)」のフライトNo.4を構成する気球群でした。これは、高高度を浮遊する特殊気球に音響マイクを搭載し、ソ連が実施する初期の核実験で生じる低周波音波を長距離探知するための極秘スパイ計画でした。当時の軍は、ソ連に探知計画の存在を知られることを防ぐため、気象観測気球というカバーストーリーを用いて残骸を急ぎ回収・隠蔽したのが記録上の事実です。