丿貫福富町本店の暖簾をくぐると、まず対峙するのが看板メニューである「煮干蕎麦」です。器に注がれたスープは、一目でそれと分かる完全な灰濁色。セメント系と呼ばれるこのスープは、大量の煮干しを頭から内臓まで砕き溶かしたものでありながら、特有の酸味や生臭さを一切感じさせません。
スープを口に含んだ瞬間、高純度の旨味粒子が舌全体を覆い尽くし、後からキレのある醤油ダレの塩味と煮干しの心地よい苦味が押し寄せます。麺は低加水の細ストレート麺を採用しており、パツパツとした歯切れの良さとコシの強さが濃厚なスープをしっかりと受け止めます。具材は低温調理された大判の豚肩ロースレアチャーシューと粗刻みの玉ねぎ、青ねぎのみ。余計なトッピングを削ぎ落とし、スープと麺の対話を極限まで突き詰めたストイックな構成です。
さらに同店の評価を不動のものにしているのが、公式X(旧Twitter)で毎朝発信される日替わりの限定メニューです。そのバリエーションは驚異的で、以下のような海鮮食材が惜しげもなく投入されます。
- 境港産紅ズワイガニ蕎麦:甲殻類特有の甘美な香りと濃厚なミソのコクが煮干しベースに溶け合う至高の一杯。
- オマール海老蕎麦:洋のテイストを取り入れ、フレンチのビスクを想起させる濃密な旨味の塊。
- 浅蜊(アサリ)潮蕎麦・牡蠣蕎麦:貝類から抽出されたコハク酸の爆発的な旨味が、清湯または白濁スープに凝縮。
- マッドクラブ・烏賊(イカ)煮干蕎麦:イカ墨やワタのビター感を大胆に活かした、マニア垂涎のディープな限定麺。
これら限定メニューの評判は極めて高く、常連客の間では「今朝の公式Xの仕入れツイートを見てから訪問を決める」というのが定石となっています。限定麺は杯数限定のため、昼過ぎには完売することもしばしばです。