鳥山明氏の作画における中核は、超人的な空間把握能力と正確無比なデッサン力にあります。特にアクションシーンや乗り物の描写において、広角レンズで捉えたような強いパースペクティブ(遠近感)を用いながらも、キャラクターの骨格やパーツの比率が1ミリの狂いもなく維持されています。
この技術の原点にあるのが、漫画家デビュー前に培われたデザイナーとしての経歴です。工業デザインや広告レイアウトに携わっていた経験から、頭の中に3DCGモデルのような正確な立体データを構築し、それを自由なアングルから紙の上へ直接出力する特異な作画プロセスが可能になっていました。
人物の筋肉のつき方、関節の可動域、重心移動のリアルさは、デフォルメされたキャラクターであっても現実の物理法則に忠実です。『ドラゴンボール』で見られる空中戦の激しい攻防でも、読者が「キャラクターがどの高さで、どの向きに動き、どちらへ吹き飛んだのか」を一瞬で直感的に理解できるのは、背景と人物のパースが完璧に同期しているからです。