メガロフォビアを抱える人に対し、周囲は「何も攻撃してこないのに、なぜ怖がるのか」と疑問を持ちがちです。しかし、メガロフォビアの原因を探ると、人類が生き延びるために培ってきた生存戦略の痕跡が浮かび上がってきます。
進化心理学の観点では、人類の祖先にとって「自己より何十倍も巨大な動く影」は、捕食者(大型肉食獣やマンモスなど)か、生命を脅かす自然災害(落石、土砂崩れ、津波)を意味していました。人間には、巨大な物体を視認した瞬間に扁桃体を強く刺激し、一瞬で「闘争か逃走か(Fight or Flight)」の臨戦態勢へシフトさせるプログラムが生得的に組み込まれています。メガロフォビアは、この防衛スイッチが過敏に作動している状態といえます。
また、近年の認知神経科学の研究では「空間知覚の破綻」も指摘されています。人間の脳は、網膜に映る像と首の角度、平衡感覚(前庭覚)を統合して物体の大きさを推測します。しかし、あまりにも巨大な物体を見上げた際、視界のパースペクティブ(遠近感)が極端に歪み、脳の処理能力を超過してしまいます。「倒れてくるのではないか」「天が落ちてくるのではないか」という錯覚が生じるのは、脳が処理しきれなかったエラーを危険信号として身体にフィードバックするためです。