縦目ベンツが製造された1960年代後半から1970年代は、ダイムラー・ベンツ社が名高い企業スローガン「最善か無か(Das Beste oder nichts)」を妥協なく製品に注ぎ込んでいた黄金期です。当時のメルセデスは、コスト計算よりも「理想の安全性と耐久性をいかに具現化するか」を最優先して設計されていました。
ボディシェルには強靭な高張力鋼板が惜しみなく使われ、ドアを閉めた瞬間に響く「金庫の扉」のような密閉感のある重厚な金属音は、現代の軽量化された車では絶対に味わえない感触です。ダッシュボードに配された本物のウッドパネルや厚みのあるMB-Tex(合成皮革)シート、大型のステアリングホイール、そして中央にそびえるスリーポインテッドスター越しに見る直線的なボンネットの視界は、ドライバーに圧倒的な精神的充足感をもたらします。
また、縦目ベンツ ディーゼルモデル(200D、220D、240D、世界初の5気筒ディーゼル300D)は、当時「100万キロ走る」と称賛された驚異的な耐久性を誇ります。決して速くはありませんが、独特のエンジン鼓動とともに粘り強く走るフィールは、脱炭素時代の今だからこそアナログな工業遺産としての深い味わいを感じさせます。