連載当初、一歩の引退劇に対してファンコミュニティは激しい怒りと困惑に包まれました。大手掲示板やSNS、知恵袋には「主人公が負けて引退するボクシング漫画に何の意味があるのか」「連載の引き伸ばしではないか」という辛辣な意見が溢れかえりました。
しかし、セコンド編が進行するにつれて、読者の評価は180度転換を見せています。現場のファン心理の推移を追うと、以下の3つの変化が確認できます。
まず第1に、「一歩の異常な強さの再認識」です。重りをつけたまま軽々とシャドーを行い、プロ選手相手のミット打ちで軽快にアドバイスを飛ばす姿に、読者は「いつリミッターを外すのか」という強烈なカタルシスを抱くようになりました。海外のマンガファンコミュニティ(Reddit等)でも「Coach Ippo(セコンド一歩)は史上最強の育成モード」と称賛され、一種の修業期間として高い評価を獲得しています。
第2に、「ライバルたちの世界の闘い」の深化です。一歩がリングの外に立ったことで、間柴了の世界ライト級王座挑戦、千堂武士のWBAフェザー級王者リカルド・マルチネスへの挑戦、そして盟友・宮田一郎の葛藤など、群像劇としてのクオリティが飛躍的に向上しました。一歩は客観的な視点から彼らの死闘を見届けることで、読者と同じ目線で「世界の頂点とは何か」を学び直しているのです。
第3に、「鴨川会長との歪な関係の清算」です。現役時代の一歩は「会長の教えを忠実に守る良い子」であり、自ら戦術を組み立てる主体性に欠けていました。セコンドとして孤独なリング上の選手を救う立場を経験したことで、一歩は初めて「ボクサーとしての真の自立」を果たしつつあります。