ポートアイランド北公園に佇むこの洋館のルーツは、明治末期の1905(明治38)年頃に遡ります。元々は神戸市中央区北野町3丁目の高台に、英国人貿易商であるA.E.ヘリン氏(一部記録ではA.E.ヘイガー氏)の自邸として建設された木造2階建ての邸宅でした。当時の神戸開港期における居留地建築の意匠を色濃く残し、開放的なベランダや下見板張りの外壁を備えた優美なコロニアル様式の建造物です。
転機が訪れたのは1970年代後半でした。都市開発や建物の老朽化によって取り壊しの危機に瀕した際、神戸市が貴重な神戸近代建築遺産として解体・部材保存を決定。折しも1981年に開催された地方博覧会の金字塔「神戸ポートアイランド博覧会(ポートピア'81)」の会場整備構想と連動し、人工島のウォーターフロントである北公園へ移築・復元されたのです。
山手のエキゾチックな街並みにあった洋館が、海に面した人工島の最前線へと居場所を変えるという試みは、当時としては極めて先進的な都市景観の創造でした。移築に際して神戸市指定有形文化財(ならびに景観形成重要建築物等)の系譜を受け継ぐ重要建造物として位置づけられ、山と海を結ぶ神戸の歴史の象徴として「ポートアイランド旧異人館(みなと異人館)」と名付けられました。