本作の歴史を振り返る上で避けて通れないのが、制作現場を揺るがした不測の事態です。特に2020年4月期にスタートしたスーツシーズン2放送休止の経緯は、テレビドラマ史に残る前代未聞のトラブルでした。第2話の放送直後、新型コロナウイルスの感染急拡大に伴い撮影が完全にストップ。約3カ月間にわたる放送延期を余儀なくされました。
当時、現場スタッフの間では「全話数を大幅に短縮して打ち切るのではないか」という懸念が囁かれていました。しかし、フジテレビ編成部と制作陣は、月9枠史上初となる「7月末からの再開・秋クールにまたがる全15話完走」という異例の決断を下しました。真夏の炎天下で真冬のシーンを撮影し直すなど、キャスト陣が直面した過酷さは想像を絶するものでしたが、中断期間中もオンラインを活用して結束を維持したエピソードはファンの間で語り草となっています。
もう一つの大きな話題が、原作版におけるメーガン妃のスーツ降板理由と、それが日本版に与えた影響です。レイチェル役として世界的な知名度を得たメーガン・マークル(当時)は、英王室のヘンリー王子との婚約・結婚に伴い、シーズン7をもって俳優業を完全引退しました。この電撃劇は原作のストーリーラインを大きく塗り替え、日本版の翻案作業にも「真琴のキャリアと恋の結末をどこまで原作に追従させるか」という難題を突きつけました。結果として日本版は、海外のゴシップ的喧騒に左右されることなく、純粋な法廷エンターテインメントとしての着地を選択したのです。