「イージーケア」という言葉の響きから、「洗濯機から出して干すだけで、糊の効いた状態になる」と思い込んでしまう利用者は後を絶ちません。しかし、繊維業界の客観的な基準に目を向けると、イージーケアとノンアイロン(形態安定)の間には明確な境界線が存在します。
繊維製品の防シワ性能を測る公的指標として、日本産業規格(JIS L 1096)が定める「W&W性(ウォッシュ・アンド・ウェア性)」が存在します。シワの残留度合いを1.0級(全くシワが伸びていない)から5.0級(完全に平滑)までの等級で評価する仕組みです。
一般的に、市販のイージーケアブロードシャツが取得している数値は2.5級から3.0級前後にとどまります。この等級が意味する本来の定義は「アイロンがけの手間を大幅に軽減できる(アイロンの滑りが良くなり短時間でシワが伸びる)」というレベルであり、完全な無干渉・ノーアイロンを保証するものではありません。
これに対し、「ノンアイロン」や「完全形態安定」を正式に謳う製品は、JIS基準で3.2級以上、高性能なニットシャツなどでは4.0級以上をクリアしています。綿100%の平織りであるブロード生地は、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を密に織り込んでいるため、本来シワが最も目立ちやすい構造を持っています。このブロード生地に樹脂加工や液体アンモニア加工を施してシワを抑えているのがイージーケアシャツであり、「アイロン不要」という期待をそのまま当てはめると認識のズレが生じることになります。