毎年12月に行われる箱根駅伝の共同記者会見において、メディアが最も熱い視線を送るのが原監督の箱根駅伝作戦名です。初優勝を飾った2015年の「ワクワク大作戦」に始まり、「ハッピー大作戦」「ゴーゴー大作戦」「サンキュー大作戦」「負けてたまるか大作戦」など、一見するとキャッチーでユーモラスなネーミングが並びます。
単なるウケ狙いやマスコミ向けのリップサービスではありません。認知心理学および行動経済学の観点から見ると、極めて高度な心理誘導が組み込まれています。駅伝という極限の重圧に晒される現場において、選手が「負けたらどうしよう」と防衛的悲観に陥るのを防ぎ、ポジティブな言葉(ワクワク、ハッピー、笑顔)によって脳内の扁桃体の過剰な興奮を鎮める効果を狙っています。
さらに、原監督の名言集にはビジネスパーソンや指導者の胸を突く本質的な言葉が揃っています。
「覚悟を持つということは、言い訳を捨てるということ」
「ダメなヤツほど化ける。最初からできるヤツは自分の限界を勝手に決めてしまう」
「指導者と選手は、支配と服従の関係であってはならない。同じ目標に向かうパートナーだ」
自著や特別番組のインタビューで語られたこれらの言葉の根底にあるのは、人間に対する深い信頼です。精神論を排したロジカルな対話を重ねながら、ここ一番では感情に訴えかけて選手の心に火をつける。この緩急自在のコミュニケーションこそが、土壇場での「青学マジック」を引き出す触媒となっています。