ネット上では長年、「原作初期から吉野家と契約していたのではないか」「単なる商業トラブルによる金銭の対立だったのではないか」といった誤解や憶測が散見されます。しかし、一次資料や嶋田先生本人の証言を精査すると、そうした噂とは異なる事実が浮かび上がります。
第一に、集英社および作者と吉野家の間には、金銭が絡む公式なスポンサー契約は存在していませんでした。学生時代にお金がなかった嶋田先生たちが、大阪から上京した際に初めて食べた吉野家の牛丼の味に深く感動し、「作品内でスグルに美味そうに食べさせたい」という純粋な作家心理から描かれたものでした。
第二に、原作漫画の最初期(コミックス1巻第1話)において、実はスグルが食べていたのは吉野家ではなく「なか卯の牛丼(当時の牛肉うどん等を含む)」の看板でした。アニメ化の際に東映動画側の演出プランによって吉野家スタイルに統一され、あの国民的ソング「牛丼音頭」が誕生したという背景があります。商業的な打算が一切なかったからこそ、後年の企業側の無機質な対応が深い心の傷となったのです。