物理的な側面において、お金は実際にどの程度汚れているのでしょうか。感覚的な不潔感ではなく、微生物学的な調査データを確認すると、驚くべき実態が浮き彫りになります。
英オックスフォード大学が実施した大規模な紙幣調査によると、流通している紙幣1枚には平均して約2万6,000個もの細菌が付着していることが判明しました。さらに、厳重に管理された印刷直後の真新しい紙幣であっても約2,400個の細菌が検出されており、完全に無菌状態のお札は世の中に存在しません。不特定多数の手から手へと渡り歩き、財布の密閉空間で体温に近い温度に保たれる紙幣は、微生物にとって格好の移動媒体となっています。
医療現場からも警鐘が鳴らされています。しもじま内科クリニックの臨床知見によると、お金に付着している菌の大半は皮膚や環境中に存在する害のない常在菌であるものの、保管場所や流通経路によってはノロウイルスや大腸菌、サルモネラ菌などの病原体が付着しているリスクを排除できません。岐阜医療科学大学が公式YouTubeチャンネル等で公開した細菌培養実験の検証データでも、素手で日常的に扱われる硬貨や紙幣から多数のコロニーが形成される様子が可視化され、大きな反響を呼びました。
また、硬貨の形状も衛生状態を左右します。過去にデイリーポータルZが実施した検証報道でも指摘された通り、10円青銅貨のように複雑な平等院鳳凰堂の細工や文字の溝が彫られている硬貨は、皮脂や泥などの汚れが固着しやすい構造をしています。銅自体には微量金属作用による抗菌効果が認められるものの、細い彫刻の溝に溜まった物理的な汚れは簡単には落ちません。荷物で両手が塞がっている際に紙幣や小銭を口にくわえるといった行為は、衛生学の観点から極めてリスクが高いと言わざるを得ません。