愛知万博公式マスコットが公表されたのは2002年春のことでした。当時、愛知万博は会場予定地だった海上(かいしょ)の森でのオオタカ営巣確認などを背景に、環境保護と開発のあり方を巡って厳しい社会的批判にさらされていました。博覧会協会が打ち出した「自然の叡智」という壮大な理念を、いかに生活者へ親しみやすく伝えるかが最大の難問となっていたのです。
この重責を担う愛知万博キャラクターデザイナーに抜擢されたのが、オリジナル雑貨や独特のゆるいキャラクター性で熱狂的なファンを持つ姉妹ユニット「アランジアロンゾ」(有限会社アランジ アロンゾ)でした。コンペティションにおいて彼女たちが提示したスケッチは、従来の官製マスコットにありがちな「未来的」「メカニカル」な造形とは対極に位置する、極めてシンプルな緑色の生命体でした。
当時の制作関係者の手記や回顧録によると、デザインの根底にあったのは「記号的な可愛さの押し付けを排除すること」でした。森の古老であるモリゾーのモジャモジャとした毛並み、生まれたばかりのキッコロのつぶらな瞳。あえて余白を残したミニマルなフォルムは、鑑賞者が自身の感情を投影しやすい「受け皿」としての機能を果たし、のちの爆発的ブームの決定的な要因となりました。