目まぐるしい消費社会において、モノを持たない暮らしを選ぶミニマリズムによって幸福感が高まる理由も、まさにこの「足るを知る」メカニズムで論理的に説明できます。
人間の脳は、新しいモノや地位を手に入れてもすぐに慣れてしまい、さらなる刺激を求める「ヘドニック・トレッドミル(快楽の踏み車)」という罠に陥りやすい性質を持っています。SNSを開けば他人の華やかな生活や成功がタイムラインに溢れ、「もっと買わなければ」「もっと稼がなければ」と焦燥感を煽られる構造ができあがっています。
そこで「吾唯足知」の視点を取り入れると、幸福の尺度が「他者との比較」から「自分の内面」へと一気にシフトします。余計な持ち物や過剰な人間関係を削ぎ落とすことで、自分の手元にすでに存在していた時間的ゆとり、家族との団らん、美味しい珈琲を飲むひとときの価値に気づくことができるのです。幸福とは「手に入れるもの」ではなく、「すでにここにあると気づく能力」そのものといえます。