国内外の観光名所や歴史的庭園では、維持管理費として数百円から千円前後の拝観料が設定されるのが一般的です。しかし、旧江戸城の本丸・二の丸・三の丸跡地に広がる皇居東御苑は、入場料無料で一般開放されています。この破格の待遇の理由は、宮内庁の公的文書および昭和の政治決定に記録されています。
皇居東御苑の一般公開が始まったのは1968年(昭和43年)10月1日のことです。当時、皇居内に「新宮殿」が建設されたことを契機として、宮内庁と内閣は「皇室用財産の一部を国民の休養および文化振興のために広く公開する」という閣議決定を行いました。
法的な位置付けとして、皇居東御苑は独立採算を求める都市公園や民間商業施設ではなく、「皇室用財産(国有財産)」として国が直接管理・維持しています。庭園の樹木剪定や史跡の保存修復、警備体制に必要な経費はすべて国の予算(宮内庁費)から賄われているため、来園者から入場料を徴収する必要がありません。
現場を警護する皇宮護衛官や宮内庁職員の配置も国の公務として行われており、「国民共有の歴史的財産を誰もが平等に享受できるようにする」という理念が、半世紀以上にわたって受け継がれています。