劇場版公開から三十数年が経過した現在でも、SNSや動画配信サービスのレビュー欄、ファンコミュニティでは合唱コンクールのシーンに関する熱烈な証言が絶えません。当時の制作スタッフの証言や当時の特別対談などによると、この合唱シーンの作画と音響設計には並々ならぬ熱量が注ぎ込まれたと記録されています。
大野君が歌っている合唱曲は「一致団結の歌」とも言うべき劇中オリジナルの構成(曲名:『おれたちの歌』)。大野君の張りのあるハイトーンボイスが徐々に枯れ、喉を押さえて顔を歪める数秒間の作画演出は、子どもの映画とは思えないほどの生々しい焦燥感を醸し出しています。
リアルタイムで映画館に足を運んだ世代はもちろん、近年配信で初めて鑑賞したZ世代の視聴者からも、ネット上には以下のような生々しい感情の声が寄せられています。
「普段あんなに強気で完璧な大野君がグラウンドでも教室でも見せなかった弱さを、杉山君だけが一瞬で見抜いて声を出した瞬間に鳥肌が立った」
「言葉で『許す』なんて一言も言わないのがリアル。男の子の意地と友情の修復ってこういうことなんだと大人になってから理解して号泣した」
「子どもの頃はただ感動しただけだったが、親になった今見ると、他人の痛みを自分の声で背負おうとした杉山君の勇気に涙が止まらない」
制作を手がけた須田裕美子氏や脚本のさくらももこ氏は、映画用の大げさな奇跡を描くのではなく、「子どもたちなりのプライドの守り方」を極限までリアリズムにこだわって描写しました。この演出の純度の高さこそが、30年以上経過しても作品の評価を不動のものにしている核心です。