精神科医が薬を選ぶ際、何を基準にしているのだろうか。世界的に最も信頼されている指標の一つが、学術誌『ランセット』などに掲載された大規模なネットワークメタ解析だ。数万人の患者データを統合したこの研究は、各薬剤の「有効性(効き目の強さ)」と「忍容性(副作用の少なさ、飲み続けやすさ)」を二次元のマップに描き出した。
結果は興味深い。効果が極めて高いとされる薬が、必ずしも「最も飲みやすい薬」とは限らないのだ。例えば、三環系と呼ばれる古いタイプの抗うつ薬は、劇的な効果を示す一方で、口の渇きや便秘、眠気といった副作用が強く出やすい。一方で、現代の主流であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、効果と安全性のバランスが優れているため、処方の第一選択となるケースが多い。