糖尿病の病態において浮腫の原因が複雑化しやすいのは、全身の微小血管と自律神経が慢性的な高血糖によって広範囲にダメージを受けるためです。主な要因として以下の3つの病態が挙げられます。
第1に、三大合併症の1つである糖尿病性腎症に伴うむくみです。腎臓の糸球体(血液を濾過する毛細血管の塊)が破壊されると、体内の老廃物を排出しつつタンパク質を血液中に保持する機能が損なわれます。その結果、大量のアルブミンが尿中へ漏れ出し(タンパク尿)、血液中のタンパク質濃度が低下する「低アルブミン血症」を引き起こします。血液の浸透圧(水分を引き留める力)が落ちることで、血管内の水分が組織間隙へと染み出し、重力の影響を受けやすい下肢に顕著な浮腫が生じるのです。
第2に、糖尿病性末梢神経障害と足のむくみの密接な関連性です。神経障害が進むと、血管の収縮や拡張を司る自律神経の調節機能が乱れ、下肢の血流うっ滞が生じます。さらに知覚神経が麻痺することで、むくみに伴う重だるさや違和感に気づきにくくなり、発見が遅れる構造的なリスクを抱えています。
第3に、心不全や末梢動脈疾患(PAD)の併発です。糖尿病患者は動脈硬化の進行スピードが速く、心臓のポンプ機能低下による静脈圧上昇や、下肢の血流障害が複合的に重なることで難治性のむくみが形成されます。