「最初に歌詞を渡されたときは、正直言って戸惑いました」——水前寺清子は当時の記憶を鮮明に振り返る。「ワン・ツー、ワン・ツー」という威勢の良い掛け声で始まるフレーズの裏に、リスナーの心を捉えて離さない独特のロジックが潜んでいた。
特に物議を醸したのが、あまりにも有名な「3歩進んで2歩下がる」という一節だ。計算すれば結局は「1歩」しか進んでいない。当時のスタッフ間でも「進みが遅すぎるのではないか」「もっと勢いのある歌詞にするべきだ」という議論が巻き起こったという。しかし、そこに込められていたのは人生の本質を突く深い哲学だった。
人間は誰しも挫折し、後退するように感じる瞬間がある。だが、たとえ2歩下がったとしても、確実に1歩前進している。毎日それを積み重ねれば、1年後には365歩分の大きな前進になる。挫折すらも歩みの一部として肯定する温かい視線こそが、このフレーズの本質だったのだ。水前寺の圧倒的な声量と弾けるような笑顔が吹き込まれたことで、この歌詞は単なる根性論を超えた「人生の賛歌」へと昇華された。