日本の家庭には古くから「具材の出汁でお米を炊くのが一番贅沢で美味しい」という炊き込みご飯信仰が根強く残っています。しかし、食材の物性を細かく検証すると、鶏肉とごぼうという組み合わせにおいては、炊き込み調理はむしろデメリットが目立つ調理法です。
第一に、ごぼうから溶け出る強いアク(タンニンやポリフェノール)が炊飯器の釜内で米と一緒に高温加熱されることで、米の色が黒ずみ、食味がくすんでしまう点です。さらに、ごぼうに含まれる酵素や繊維質が米の自然な吸水を妨げ、炊飯器の底に嫌な焦げ付きや芯残りを引き起こすリスクが高まります。
第二に、鶏もも肉を炊飯器内で40〜50分間も加熱し続けると、肉のタンパク質が凝固しきってしまい、水分保持能力がゼロになってパサパサの繊維の塊と化してしまいます。旨味成分の大部分が煮汁側に流出し、肉自体の食味は抜け殻のようになってしまうのが炊き込みの大きな弱点です。
フライパンで短時間かつ強火でコーティングするように炒め煮にし、炊き上がった美しい白米と合わせる混ぜご飯は、決して「手抜きの妥協策」ではありません。具材の歯ごたえ、鶏肉のジューシーさ、米の粒立ちの3要素をすべて最高潮の状態で共存させるための極めて合理的な調理技術なのです。