「本物の金なら絶対に錆びたり変色したりしない。黒ずみや赤錆が出ているからこれはメッキに違いない」——ネットの掲示板やSNSで頻繁に散見されるこの言説は、金属工学的に完全な誤解です。
確かに純金(K24)は化学的に極めて安定しており、王水以外の単独の酸や硫黄には反応しません。しかし、私たちが日常的に身につけているジュエリーの多くは「K18(純度75%)」や「K10(純度41.7%)」です。硬度を高めて加工しやすくするため、残りの25〜58%には銀、銅、パラジウムといった「割金(わりがね)」が意図的にブレンドされています。
金製品が変色する直接的な原因は、金そのものではなく、この割金に含まれる銅や銀が大気中の硫化水素(硫黄成分)や皮脂、汗、化粧品に含まれる塩分・油分と化学反応を起こすことにあります。銅が酸化・硫化すれば茶褐色〜黒ずんだ皮膜(硫化銅)が形成され、銀が反応すれば特有の黒変(硫化銀)が生じます。つまり、「K18であっても、保管状況や着用環境次第で赤や茶、黒に変色することは極めて自然な物理現象」なのです。
逆に、変色を根拠に偽物と即断して破棄したり、不当な二重価格を提示する悪質な不用品回収業者に「錆びているから二千円で引き取る」と言いくるめられる被害が多発しています。変色部分は専用の貴金属磨きクロスや中性洗剤での超音波洗浄、あるいは還元作用を利用した重曹湯煎によって容易に除去可能です。「変色=メッキの剥がれ」と短絡的に結論づける前に、ルーペで下地金属(真鍮色の露出)の有無を冷静に確認してください。