「いとをかし」の真実!単なる面白いで片付けられない清少納言の美学

「いとをかし」の真実!単なる面白いで片付けられない清少納言の美学

「いとをかし」の真実!単なる面白いで片付けられない清少納言の美学の特集記事をお届けします。最新トレンドが満載です。

清少納言の代表作『枕草子』は、まさに「をかし」の宝庫であり、彼女の鋭利な審美眼が詰め込まれたエッセイです。もっとも有名な第一段「春はあけぼの」を通して、実際の使われ方と情景を味わってみましょう。

清少納言は、四季のもっとも輝く時間帯を切り取りながら、言葉をリズミカルに重ねていきます。

【古典本文】
春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、すこしあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。
夏は夜。月のころはさらなり、闇もなほ、蛍のおほく飛びちがひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。雨など降るもをかし。
秋は夕暮れ。夕日のさして山の端いと近うなりたるに、烏の寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり。まいて雁などの連ねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。
冬はつとめて。雪の降りたるは言ふべきにもあらず、霜のいと白きも、またさらでもいと寒きに、火など急ぎおこして、炭持て渡るも、いとつきづきし。

秋の夕暮れの描写に注目してください。ねぐらへ帰るカラスの哀愁には「あはれなり」と情動的な言葉を使いつつ、遠く空の彼方に連なって小さく飛んでいく渡り鳥の雁の幾何学的な美しさには「いと小さく見ゆるは、いとをかし(隊列を作って小さく点々と飛んでいる姿は、実に趣深い)」と知的な観察眼を向けています。

彼女の「をかし」は、対象を突き放して冷静に眺めつつ、「あの小さな点が線を描いている姿、なんて風流でチャーミングなのかしら」と発見する喜びです。ただ綺麗だと眺めるのではなく、情景の中に潜む「美の規則性や意外性」を発見した瞬間にこそ、「いとをかし」の感嘆詞が響きます。

中村 さくら
著者

中村 さくら

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。