関西の歓楽街を語る上で避けて通れないのが、大阪市西成区の飛田新地だ。飛田新地料理組合が統括するあちらの街では、玄関口に若い女性と「呼び込みの仲居」が並び、通りから顔を直接確認できるスタイルが確立されている。華やかで開放的な飛田に対し、信太山新開地は徹底して「陰」の気配を漂わせる。
信太山の特徴は、格子戸越しにしか中の様子を窺えない構造にある。いわゆる「ちょんの間」の原風景を色濃く残し、入店して初めて相手の全貌がわかるシステムだ。風俗産業としての分類ではなく、名目上は料亭やカフェー建築の系譜を引くため、風営法の適用をすり抜ける構造自体は共通している。だが、信太山はより生活圏に溶け込んでおり、小学校の通学路や一般の民家と目と鼻の先で営業が続いている点に特異性がある。
料金体系も飛田よりやや安価に設定されており、地元の常連客だけでなく、近隣の軍事施設関係者や長距離トラック運転手などの固定客を長年掴んできた。独自のローカルエコノミーが完成されているからこそ、過度な商業化に走ることなく独自の形態を保ち続けられているのだ。