「国境なき医師団」という名称から、医師専門の組織であると誤解されがちですが、実際に現地へ派遣される国際スタッフのうち、約半数は非医療系の専門スタッフで占められています。病院が機能するためには、薬や医療資材を調達し、電気や水を確保し、安全な移動ルートを構築するスペシャリストが不可欠だからです。
看護師として参加する場合、最低でも3年以上の臨床実務経験が求められます。さらに、救急医療、集中治療(ICU)、感染症管理、母子保健、小児科などの実践的なスキルに加え、現地の多国籍チームや現地採用スタッフを指導・管理するためのマネジメント能力が厳格に審査されます。語学力に関しても、日常会話レベルではなく、カルテの記載や緊急手術時の指示伝達が可能な実践的英語力、あるいは西アフリカなどの派遣地で必須となるフランス語力が必須要件です。
そして、現場の生命線を握るのが「ロジスティシャン(物流・物資調達・施設管理者)」の採用枠です。ロジスティシャンの任務は多岐にわたります:
- 紛争地における通信機器(衛星電話・無線機)の設営とセキュアな通信網の確保
- インフラが途絶した被災地での発電機設置、安全な飲用水の供給システムの構築
- トラックや四輪駆動車などの車両運行管理、燃料調達、過酷な未舗装路の輸送ルート開拓
- 空爆や略奪のリスクに備えた医療施設自体の防護工事および避難計画の策定
民間企業のサプライチェーンマネジメント経験者、建設エンジニア、元青年海外協力隊員など、多彩なバックグラウンドを持つプロフェッショナルがロジスティシャンとして最前線を支えています。「メスを握る医師」と同等以上に、「現地に安全な病院環境を即座に立ち上げる技術者」が切望されているのです。