朝ドラ『虎に翼』で伊藤沙莉が演じたヒロイン・猪爪寅子は、三淵嘉子の実話を下敷きにしつつも、ドラマならではの大胆なアレンジや創作が加えられています。史実と作品の主な相違点を整理すると、彼女のより生々しい実像が浮かび上がってきます。
最大の違いのひとつは、家庭環境と本人のキャラクター像です。ドラマの寅子は感情豊かで親しみやすい人物として描かれましたが、実際の嘉子は極めて論理的で弁が立ち、歯に衣着せぬ発言で男性たちを圧倒する圧倒的なリーダーシップの持ち主でした。法曹仲間からも「感情に流されず、法理を突き詰める切れ者」と評されていました。
また、ドラマで描かれた学生時代の仲間たちとの青春劇は、実在の同窓生たち(中田正子や久米愛ら)の性格や境遇を巧みにブレンドしたフィクションです。戦後の混乱期に司法省(現・法務省)に乗り込み、自ら採用を直談判したエピソードは実話そのものですが、現場で直面した偏見や冷遇は、ドラマの描写以上に過酷な現実でした。