ネット検索で「ためしてガッテン 歯 重曹」というキーワードが目立つように、番組で紹介されたと誤認されたまま「食用重曹で歯を磨くと驚くほど白くなる」という情報が広く出回っています。しかし、日本歯科医師会や多くの歯科専門医は、自己判断による高濃度な重曹ハミガキに対して強い警鐘を鳴らしています。
重曹(炭酸水素ナトリウム)は弱アルカリ性であり、油汚れや酸性の汚れを中和・分解する働きがあります。また、細かな粒子によるクレンザーのような物理的研磨作用を持っています。確かに、表面に付着したばかりの茶渋などのステインは一時的に削り落とされ、一見すると白くなったように感じられます。しかし、ここには長期的に取り返しのつかない2大リスクが潜んでいます。
第一のリスクは「エナメル質の不可逆的な摩耗」です。鉱物の硬さを示すモース硬度において、歯の表面のエナメル質は「5〜6」と非常に硬い組織ですが、重曹の粒子(モース硬度2.5)であっても、毎日のブラッシングで強い摩擦力をかけ続けると、表面の滑らかなガラス層が確実に削れ、無数の傷が刻まれます。エナメル質が薄くなると、その奥にある黄色味の強い「象牙質(ぞうげしつ)」が外側から透けて見えるようになり、結果として「磨けば磨くほど歯全体が黄色くくすんで見える」という最悪の結果を招きます。
第二のリスクは「歯肉や粘膜への化学的・物理的ダメージ」です。高濃度の重曹ペーストは口腔内のデリケートな粘膜に対してアルカリ刺激が強すぎ、歯茎の炎症や知覚過敏を引き起こす要因となります。テレビ番組の解説を都合よく解釈したネット上の民間療法を鵜呑みにすることは、極めて危険です。