インターネット上の議論で頻繁に見受けられるのが、「カルトに騙されるのは知能が低い人や心の弱い人だけだ」という偏見です。しかし、これは実態調査や犯罪心理学の知見と完全に矛盾しています。
歴史上の大規模なカルト事件を見れば明らかなように、オウム真理教でサリン製造や教団武装化を主導したのは、国内有数の大学で修士号や博士号を取得した理工系研究者や医師たちでした。彼らは知識や論理的思考力が欠如していたのではなく、むしろ「真面目で純粋、知的好奇心が旺盛でありながら、既存の社会システムに閉塞感を抱いていた」ために、教団が提示した「明快かつ極端な世界観」に論理的にハマり込んでしまったのです。
人間には、自分が一度下した決断を正当化しようとする認知的不協和の解消という心理作用が働きます。「これだけの時間とお金を投資したのだから、この教えが間違っているはずがない」「辛い修行に耐えているのは崇高な使命のためだ」と、矛盾を解消するために自らマインドコントロールを強化してしまうのです。誰もが人生の中で病気、失業、離婚、親しい人との死別など、心理的に無防備になる瞬間を迎えます。そのタイミングで専門的なアプローチを受けた場合、「自分だけは絶対に騙されない」と過信している人ほど、足元をすくわれる危険性が高いと言えます。