安田温泉やすらぎを語る上で欠かせないもう一つの柱が、本格的な芝居小屋「かわら座」の存在です。施設が位置する阿賀野市保田地区は、200年以上の歴史を誇る伝統工芸「安田瓦(やすだかわら)」の銘産地。その地域文化の息吹を館名に宿した「かわら座」では、全国の名だたる劇団が月替わりで座長を務め、人情味あふれる時代劇芝居と華やかな舞踊ショーを繰り広げています。
かつて全国の温泉街や健康ランドの象徴だった大衆演劇ですが、維持管理の難しさや客層の高齢化により、常設の芝居小屋を持つ施設は年々激減しています。そうした逆風下でも、かわら座が熱気あふれる拍手に包まれている理由は、舞台と客席の境目を溶かす圧倒的な臨場感と人情味にあります。
客席では、地元の常連客が手拍子を送り、旅の途中でふらりと立ち寄った一見の観光客が役者の艶やかな所作とキレのある殺陣に目を奪われる光景が日常です。昭和のエンターテインメントが持っていた泥臭くも温かいエネルギーは、スマートフォンの画面越しでは決して味わえない「生の情動体験」として、20代〜30代の若年層カルチャー愛好家からも新鮮な感動をもって受け止められています。