インターネット上の掲示板や知恵袋、SNSで定期的にトレンド入りするのが、「笑ゥせぇるすまんの実写ドラマはなぜ配信されないのか?」「DVD化されない理由は何なのか?」という疑問です。YouTubeや個人ブログ等では「原作者が実写の出来に激怒して封印した」「演出が過激すぎて放送禁止になった」といった推測がまことしやかに語られていますが、関係各所の証言や当時のテレビ業界の構造を丹念に取材すると、全く異なる実態が浮かび上がってきます。
最大の理由は、1990年代末における「番組二次利用(ビデオ化・ネット配信)に関する権利処理の未整備」にあります。1999年当時、テレビドラマは「一度地上波でオンエアして役目を終える」前提で制作協定が結ばれるケースが一般的でした。特に本作は、1話完結のオムニバス形式を採用していたため、各話に登場したゲスト俳優陣の顔ぶれが極めて豪勢かつ多岐にわたっていました。
当時のドラマゲスト一覧を振り返ると、風見しんご、遠藤久美子、高嶋政伸、羽賀研二、大竹まこと、生瀬勝久など、大手芸能事務所の実力派から個性派タレントまで数十名が名を連ねています。これら全員の所属事務所に対し、四半世紀が経過した現在、ネット配信やDVD化のための「肖像権の二次使用許諾」を個別に再取得することは、実務的・コスト的に天文学的なハードルとなります。中には芸能界を引退したキャストや権利関係の所在が複雑化しているケースも含まれており、これが再商品化を阻む決定打となっています。
加えて、劇中で使用された劇伴音楽や洋楽BGMの著作権処理問題も無視できません。平成のテレビドラマでは、本放送限定の許諾で国内外の既存有名楽曲が劇中で多用されるケースが多く、パッケージ化の際にはすべての音楽を差し替えるか高額な著作権料を支払う必要が生じます。テレビ朝日本体や制作プロダクションにとって、すでに放送終了から長い年月が経った単発ドラマに数千万円規模の権利処理費用を投じるビジネス上の合理的理由は見出しにくく、結果として「倉庫の奥底に眠る幻の名作」となってしまったのが冷徹な事実です。