善光寺の床下に広がる地下回廊を進む「お戒壇巡り」は、まさに外界の光を100%遮断した極限の空間だ。目の前にあるのは、漆黒という言葉すら生ぬるい完璧な闇。壁に沿って右手を滑らせながら進む以外に、前進する術はない。
この漆黒の暗闇を進む真の魅力は、「見る」という情報処理を強制的に停止させられる点にある。視覚が奪われると、耳は微かな足音や吐息を拾い上げ、指先は壁の冷たさや木肌の凹凸を鮮明に察知し始める。暗闇の奥深くへと進むにつれ、恐怖心は次第に静寂な没入感へと変わり、己の呼吸と心拍だけに意識が集中していく。