ハマチをさばく前に、魚自体の特性を正しく理解しておくことが上達への近道です。日本古来の出世魚文化において、ブリはその成長段階によって呼び名が変わります。関東では「ワカシ→イナダ→ワラサ→ブリ」、関西では「ツバス→ハマチ→メジロ→ブリ」と呼称が変遷してきました。歴史的文献である室町時代の料理書にもその名が見られ、古くから日本の食文化の中心に位置づけられてきました。
現代の流通市場、特に量販店において「ハマチ」と表記される場合、体長40〜60cm前後(体重2〜3kg程度)の若魚を指すケースと、養殖されたブリ全般を指すケースがあります。成魚のブリに比べてハマチは身が引き締まり、脂のくどさが少なく、軽快な旨味としっかりした歯ごたえを持つ点が特徴です。
調理に入る前の魚の下処理手順は、仕上がりの生臭さを排除するために極めて重要な工程となります。
まず行うべきはウロコ処理です。ハマチのウロコは非常に細かく、一般的なウロコ取り器では飛び散りやすく皮を傷つけがちです。板前が多用するのは、包丁を寝かせて皮の表面を薄く削ぐようにウロコを剥ぎ取る「すき引き」という技法です。すき引きが難しい初心者の場合は、ペットボトルのキャップのフチを使ったり、目の細かい金タワシで尾から頭に向かって優しく撫でるように擦ることで、身を傷めずにウロコを取り除くことができます。
続いて、エラと内臓の除去に移ります。エラ蓋を開き、エラの上下の結節部を包丁で切り離して内臓ごと一気に引き抜きます。内臓を取り出した後の腹腔内には、背骨に沿って「腎臓(血合い)」が膜に覆われて残っています。この膜に包丁の切っ先で一本の筋目を入れ、歯ブラシや竹ササラを使って流水で完全に洗い流します。この血の塊を徹底的に除去することが、後々の生臭さを防ぐ最大の分岐点です。水洗い後は清潔なペーパータオルで腹の中まで完全に水気を拭き取ります。