鬱蒼とした原生林を抜け、地図にすら詳細が記されていない古道を行く。険しい岩稜帯を登り切った者だけが目にするのは、断崖絶壁に懸造りされた奥の院だ。巷で話題のパワースポットという軽妙な響きとは裏腹に、現地に漂う空気はどこまでも重く、神聖そのものである。早朝、濃霧の晴れ間に現れる神域は、現世と常世の境界線が曖昧になるような錯覚をもたらす。
現地を案内してくれた古参の先達は、苔むした岩座を指差しながら語った。「真の神聖参拝ルートとは、肉体の限界を超えて己の我を削ぎ落とす修練の道。山そのものが神の肉体であり、登ること自体が禊(みそぎ)なのです」。一般の参拝者が行き交う表参道から外れた旧行者道には、古の祈祷者たちが命がけで切り開いた結界地が今なお息づく。そこを訪れた人々が口を揃えて語る「運気の劇的な好転」の背景には、日常の雑念を極限状態でリセットする精神的な大転換が存在していた。