東京・恵比寿の路地裏。夕暮れ時になると、ガラス張りのモダンな店内に若者や海外からの観光客が吸い込まれていく。彼らのお目当ては、かつておじさんの飲み会メニューと括られていた一品だ。従来の小鉢スタイルではなく、フレンチのカルパッチョを思わせる大皿に美しく敷き詰められたタコと、自家製ポン酢が放つ甘酸っぱい香りが店内を満たしている。
このブームの背景には、外食産業における「シンプルかつ本物志向」への回帰がある。過度な加工を避け、素材そのものの歯ごたえと鮮度で勝負する姿勢が、舌の肥えた現代人のニーズに合致した。単なるレトロブームと一括りにできない熱量が、ここには確実に存在する。