過去の大相撲史において、卓越した金星キラーたちは土俵を沸かせ、莫大な持ち給金を積み上げてきました。通算記録の頂点に君臨する歴代力士の数字を振り返ると、その配当の凄まじさが実感できます。
歴代金星獲得数ランキングの首位を独走するのは、元関脇・安芸乃島(現・高田川親方)の16個です。2位には高見山と栃乃洋が12個で続き、4位に土佐ノ海(11個)、5位に出羽錦と北の洋(10個)が名を連ねています。安芸乃島の場合、金星だけで持ち給金が160円底上げされ、現役時代は金星分だけで本場所ごとに64万円、年間384万円ものボーナスが基本給に上乗せされていました。
しかし、どれほど華々しい金星配当の恩恵を浴びた力士であっても、引退後の人生は二極化します。引退後に日本相撲協会に残り親方として後進を指導するためには、105個しかない年寄名跡の取得が必須条件となります。名跡を確保できた力士は親方としての給与と協会の福利厚生を維持できますが、名跡を得られずに土俵を去る力士は、一般社会への完全な転身を迫られます。
引退後に飲食業界へ進出した元幕内力士の自著や手記には、土俵を降りた直後のシビアな金銭感覚のギャップが赤裸々に綴られています。「現役時代は場所ごとに驚くような金額が口座に振り込まれ、金星を獲れば後援会からも祝儀が飛び交った。だが引退した瞬間、退職金の一時金を除けば収入は完全に途絶える。相撲界特有の金銭感覚を引きずったまま一般社会に出た力士が、数年で退職金を使い果たしてしまう例は決して珍しくない」。土俵の栄光とセカンドキャリアの生存戦略は、全く別の次元にあるのが現実です。