幻騎士は、白蘭率いるミルフィオーレファミリーにおいて「ブラックスペル第8部隊」隊長を務めた凄腕の剣士です。もとはミルフィオーレと統合する前のジッロネロファミリー幹部であり、前ボスであるユニの母アリア、そして幼きユニにも仕えていた歴戦の重鎮でした。アニメ版で彼に命を吹き込んだ声優・細見大輔氏の重厚かつ翳りを帯びた低音ボイスは、騎士道精神の裏に潜む歪んだ狂信を完璧に表現し、視聴者の記憶に鮮烈な印象を刻みつけました。
幻騎士の真骨頂は、霧の炎が持つ「構築」の特性を極限まで戦闘に昇華させた「幻剣(げんけん)」と呼ばれる独自の戦闘術です。通常、幻術使いは後方からの撹乱や精神攻撃を主としますが、幻騎士は自らの四刀流による鋭利な近接剣技と、不可視の斬撃・幻影トラップを不可分に融合させました。さらに霧のナメクジやミスト・フラガラといった匣(ボックス)兵器を駆使し、物理攻撃と精神攻撃の境界線を完全に消し去る戦法は、当時の死ぬ気グラビティの基準から見ても極めて完成された技術体系でした。
しかし、その実力は純粋な鍛錬だけで保たれていたわけではありません。幻騎士が指にはめていたのは、装着者の精神を喰らう代わりに人智を超えた暗黒のパワーを与える禁忌の指輪「ヘルリング(オスコログ)」でした。仮面のような異形のリングに意識を明け渡すことで、彼は己の限界を無理やり突破していたのです。