あの日の甲子園は、肌にまとわりつくような重い熱気に包まれていた。阪神タイガースとの伝統の一戦。マウンドに立つガルベスは、序盤からストライクゾーンの判定を巡って苛立ちを隠せないでいた。カウントを取りに行った球が無情にもボールとコールされるたび、苛立ちは表情に滲み出ていた。
張り詰めた緊張の糸が切れたのは6回裏だ。阪神の打者にホームランを浴び、交代を告げられた直後だった。ベンチへ戻る際、球審を務めていた橘高淳審判員に向かって突如踵を返すと、右手に握られた白球が唸りを上げて審判めがけて投げ込まれた。間一髪で直撃は免れたものの、球場内は騒然となり、両軍入り乱れての大乱闘へと発展。球史に残る大暴挙の瞬間だった。