業界誌のアンケート調査や現役技術者の告白手記、実務者フォーラムに寄せられたリアルな証言を照合すると、資格の価値を実感する瞬間と失望する瞬間の生々しいコントラストが見えてきます。
「大手組織設計事務所で10年勤務した後に独立した40代男性の手記」には、次のような実情が記されています。
『大手時代は30代前半で年収850万円に届き、社会的なステータスも高かった。しかし、自分の作品を残したいと独立した途端、最初の3年間は年収300万円台に転落した。一級建築士の看板だけでは仕事は来ない。クライアントを獲得する営業力、資金調達の知識、地権者との交渉力があって初めて、資格がレバレッジとして機能する。』
また、中堅ゼネコンの現場監督として働く30代技術者は、社内評価の冷徹な事実を次のように語ります。
『うちの会社では、一級建築士を持っていないと40代で課長以上のポストに就くことが制度上できない。現場の施工管理能力がどれだけ高くても、資格がなければ年収700万円で頭打ち。逆に言えば、資格を取った瞬間に現場手当と役職ルートが開き、年収が150万円跳ね上がった。割に合わないと感じるのは、資格を評価制度に組み込んでいない会社にいる場合だけではないか。』
これらの現場証言が示しているのは、「一級建築士という資格は単体で稼ぐツールではなく、高単価なプラットフォームに入るための入場チケットである」という冷徹な現実です。