安野光雅は1926年3月20日、島根県津和野町の宿屋を営む家庭に生まれました。幼少期から絵を描くことと本を読むことに没頭し、津和野の山並みや古い町並み、寺社の建築美が彼の美的感覚の原風景となったと伝えられています。山口師範学校研究科を修了後、美術教員としてのキャリアをスタートさせますが、太平洋戦争末期の召集や戦後の混乱など、若い頃は激動の時代を生き抜くことを余儀なくされました。
上京後は玉川学園や明星学園などで約10年間にわたり教鞭を執り、子どもたちの自由な発想や図工への興味を間近で見つめ続けました。この「子どもに寄り添い、教える現場にいた経験」こそが、のちに読者の知的好奇心を刺激する独自の仕掛けを生み出す土台となります。独学で磨き上げた水彩画の技術と、装丁家としてのデザインセンスを武器に、1968年に42歳で絵本『ふしぎなえ』を発表して鮮烈なデビューを飾りました。
その後は海外でも高く評価され、1984年には児童文学界のノーベル賞と称される国際アンデルセン賞(画家賞)を受賞。絵本作家、画家、エッセイストとして精力的な活動を続け、2012年には文化功労者に選出されました。晩年まで旺盛な創作意欲を燃やし続け、2026年12月24日、肝硬変のため94歳で逝去。惜しまれつつ世を去った後も、彼が築き上げた壮大なアートの世界は色褪せることなく輝きを放っています。