自宅のリビングで楽しむWOWOWの4K生中継や配信映像は、確かに鮮明で美しい。だが、スイッチングされる映像はあくまでディレクターが選んだカットであり、全体の一部にすぎない。
生観劇の醍醐味は、メインの会話が繰り広げられている背後で、リアクションを取る別の演者の仕草や、物語の伏線となる小道具の動きを自らの意思で追いかけられる点にある。視野の隅々まで歪みのない視野を提供する双眼鏡は、客席にいる鑑賞者一人ひとりに専属カメラマンの特権を付与する。
自分だけの視点で物語を紡ぎ直し、誰にも邪魔されずに推しの存在を独占する。その濃密な没入体験こそが、劇場やアリーナに足を運ぶ最大の価値なのだ。