時空を超えた救済劇を成立させる最大の鍵となったのが、作中で語られる「結び(ムスビ)」の概念だ。土地の神様を祀る宮水神社の教えであり、時間を糸に見立てて「集まり、形を作り、ひねれ、からまり、時には戻り、また繋がり、それが神様、それが時間」と説明される。
三葉が3年前の東京で瀧に託した赤い組紐、そしてご神体に奉納された「口噛み酒」。これらは単なる小道具ではなく、過去と未来、生者と死者を繋ぐ決定的なアンカー(繋ぎ止めるもの)として機能していた。瀧が隠り世(かくりよ)で口噛み酒を口にした瞬間、彼は時間軸を跳躍し、隕石が落下する当日の朝の三葉の身体へと宿ることに成功する。理不尽な天災という不可抗力に対し、古来より受け継がれてきた「結び」の力が奇跡を引き寄せた瞬間であった。