大手Q&AサイトやSNS上では、夜間に歯の激痛に苦しむユーザーからの切実な投稿が後を絶ちません。現場の臨床現場で収集される問診データやWeb上のリアルな証言を精査すると、多くの人が危険な自己判断に走っている実態が浮き彫りになります。
「ロキソニンを2時間おきに連続で3錠飲んでしまった」「痛みが消えないのでイブとバファリンを混ぜて飲んだ」といった生々しい投稿が散見されますが、これは極めて危険な行為です。日本中毒情報センターや日本歯科薬物療法学会の報告によれば、歯痛を理由とした非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の過量服薬による急性胃潰瘍や急性腎障害の搬送例は毎年報告されています。
都内の歯科救急指定医は現場の実態について次のように警鐘を鳴らしています。
「患者さんの多くは『薬の量を増やせば効くはずだ』と誤解されますが、鎮痛薬にはこれ以上飲んでも効果が上がらない限界値(天井効果)があります。過剰に摂取しても歯の痛みは1ミリも引かず、激しい胃痛や消化管出血を併発してかえって治療を困難にするケースが多発しています」
痛み止めはあくまでも「知覚神経の伝達を一時的に麻痺させているだけ」であり、虫歯菌を殺菌したり歯髄の炎症を治療したりする薬ではありません。効かないと感じた瞬間に薬の追加を止め、物理的な応急手当と専門医の治療へ切り替える意識改革が求められます。