日本市場における『ヘヴン・イズ・ア・プレイス・オン・アース』の受容史は、テレビCM文化の発展と切っても切れない密接な関係にあります。80年代後半の洋楽ブーム期にリアルタイムでヒットしたのみならず、90年代、2000年代、そして2010年代以降に至るまで、国内大手企業の大型プロモーションで幾度となく起用されてきました。
代表的な事例として真っ先に挙げられるのが、スバル(SUBARU)の自動車CMです。水平対向エンジンとシンメトリカルAWDがもたらす走りの歓びや、雄大なワインディングロードを疾走する映像のバックには、この楽曲の力強いビートと伸びやかな歌声が幾度も重ね合わされました。さらに、花王のヘアケア製品や資生堂のコスメ、JR東日本のキャンペーン、民放各局のバラエティ番組のオープニングや特番など、日本のテレビ放送でこのメロディを耳にしなかった年はないと言っても過言ではありません。
なぜ日本の広告クリエイターたちは、膨大な洋楽アーカイブの中からあえてこの楽曲を選び続けるのでしょうか。音楽心理学およびCMディレクションの視点から紐解くと、そこには「15秒・30秒広告における奇跡的な親和性」が存在します。
第1に、「開始0秒でのフック力」です。一般的な楽曲のような長いインストルメンタルのイントロを排し、「Ooh, baby, do you know what that's worth?」というベリンダのクリアな歌声とコーラスから突如として幕を開ける構成は、視聴者の注意を一瞬で画面へと引き戻します。第2に、「メジャーコードがもたらす圧倒的な高揚感と清潔感」です。変に哀愁を帯びすぎず、かといって子供っぽくならない絶妙なコード進行は、高品質なプロダクトのプレミアム感とアクティブな解放感を同時に演出するのに最も適した音響設計となっています。