八田の業績を語る上で欠かせないのが、台湾総督府の技師として主導した烏山頭水庫建設プロジェクトだ。当時、台湾南部の嘉南平野は乾期になるとひび割れ、湿期には水害に襲われる不毛の地だった。八田はこの地に東洋一の大ダムと、網の目のように張り巡らされた給排水路を建設する壮大な農業水利事業を構想する。
着工から約10年の歳月を経て完成したダムと水路は、約15万ヘクタールもの土地を潤す大事業となった。彼が設立と運営に深く関わった嘉南農田水利会は、現在もその貴重なインフラを守り続けている。国籍や立場を超えて現場の作業員を家族のように愛した八田の精神は、今なお現地の農民たちの心に深く根付いている。