熱狂的な賛辞に包まれた名盤『月に吠える』ですが、その歴史には音楽ビジネスの過酷な暗部が刻まれています。ネット上のレビューやファンコミュニティでは長年、「オジーが全曲を作曲した天才的なアルバム」と受け取られがちでしたが、これは決定的な誤解です。実際には、楽曲の実質的な骨格を作ったのはジェイク・E・リーであり、ベースのボブ・デイズリーとともに大半のリフとメロディを構築していました。
しかし、アルバムのライナーノーツに記載されたクレジットは「全曲オジー・オズボーン作詞・作曲」でした。ジェイク本人が後年のインタビューで告白した証言によると、レコーディング終了直後、シャロン・オズボーンから「作曲クレジットをすべて放棄する契約書にサインしなければ、即座に解雇し、別のギタリストにすべて弾き直させる」という非情な通告を突きつけられたのです。
当時、まだ若く知名度も資産もなかったジェイクは、キャリアを完全に断たれる恐怖からサインに応じるしかありませんでした。この作曲クレジット剥奪事件は、昭和から平成にかけての芸能界・音楽業界に横行した「力関係による搾取構造」の典型例であり、ジェイクの心に深い傷を残すことになります。アウトロのギターソロが唐突にフェードアウトしていくミックス処理についても、「ジェイクのギターがあまりに目立ちすぎたため、意図的に絞られたのではないか」という議論がファンの間で長年交わされてきました。