多くの人を戸惑わせるのが「ある日突然、手のひらや指先の皮が広範囲にめくれ始める」という急激な変化です。皮膚科専門医の診療データによると、手指の皮むけを主訴に来院する患者の背景には、外的原因と内的要因が複雑に絡み合っています。
最も頻度の高い病態のひとつが汗疱(異汗性湿疹)です。春先から夏場、あるいは季節の変わり目に好発し、手のひらや指の側面に1〜2ミリ程度の透明な小水疱が多発します。汗腺の出口付近で炎症が起き、汗が皮膚内に貯留することで発生しますが、水ぶくれが乾燥して吸収される段階(発症から1〜2週間後)になると、周囲の皮膚を巻き込んで一斉にリング状の皮むけを引き起こします。水ぶくれの段階で痒みを伴うものの、皮が剥ける時期には痒みが引いている場合が多いため、「急に皮だけがむけ始めた」と錯覚しやすい特徴を持っています。
一方、水仕事に従事する人や頻繁に手を洗う人に多く見られるのが進行性指掌角皮症(手湿疹)です。利き手の親指、人さし指、中指の指先から皮膚が硬くなり、指紋が薄れてやがてボロボロと皮がめくれていきます。皮脂膜や角質細胞間脂質(セラミド)が洗い流され、肌のバリア機能が著しく低下することで生じる接触性の障害です。
さらに見逃せないのが、指の皮がむけるのに痛くない理由です。皮膚は外側から「表皮」「真皮」「皮下組織」の3層構造を成しており、痛みや痒みを脳に伝える自由神経終末は主に表皮と真皮の境界付近に分布しています。皮がむけている深度が、死んだ細胞で構成される最外層の「角質層(厚さわずか0.02ミリ)」にとどまっている間は、神経が刺激されないため痛みを感じません。しかし、この状態を「痛くないから大丈夫」と放置して皮を無理に引きちぎると、神経が張り巡らされた真皮層まで裂け、強い痛みと出血、細菌感染を招くことになります。