松本知子の心中を伺い知る上で欠かせないのが、彼女が著した手記『止まった時計』だ。この手記には、狂気に走る夫を止められなかった妻としての苦悩、そして教団内部で繰り広げられた異様な日常が生々しく記録されている。盲目的な信仰と家族としての愛情、そして惨劇への恐怖が交錯する内容は、刊行当時から大きな波紋を呼んだ。
手記の中で明かされるのは、カリスマ的指導者として君臨した夫のプライベートな素顔と、破滅へ向かう組織内部の狂気である。洗脳のメカニズムや、身内だからこそ感じていた違和感、さらには子供たちの未来に対する絶望的な葛藤。捜査資料だけでは決して見えてこない事件の裏側が、当事者である彼女の視点から丹念に掘り起こされている。