楽曲『山河』がリリースされたのは2000年4月26日。五木ひろしが歌手生活35周年という大きな節目を迎えたタイミングでした。当時、すでに演歌界の頂点を極めていた五木が求めたのは、過去の成功体験をなぞるヒット曲ではなく、「これまでの歌手人生のすべてをぶつけられる、生涯歌い継ぐべき大作」でした。
そこで白羽の矢が立ったのが、フォーク・ニューミュージック界で数々の名作を世に送り出してきた作詞・小椋佳と作曲・堀内孝雄のコンビです。五木自身が直接アプローチを行い、ジャンルの壁を越えたコラボレーションが実現しました。関係者の証言によると、五木は制作陣に対し「小手先のテクニックではなく、人間の根源的な生き様そのものを歌いたい」という強い情熱を伝えたといいます。
小椋佳が紡ぎ出したのは、壮大なる自然とちっぽけな人間の営み、そして老いと死を見つめた深遠な言葉の連なりでした。そして堀内孝雄は、フォークの叙情性とアリス時代から培ったダイナミックなメロディラインを融合させ、従来の演歌の定型を完全に打ち破る重厚な楽曲を完成させました。編曲を手掛けた川村栄二によるフルオーケストラサウンドが加わることで、日本のポピュラー音楽史に残る一大巨編がここに誕生したのです。